ナカムラタクヤのナンヤカンヤ2

はてなダイアリーから引っ越しました。過去の記事を統合し、こちらで書きます。

日暮里・舎人ライナー

[公共交通のデザイン]日暮里・舎人ライナー

■概要

・[名称]日暮里・舎人ライナー
・[分類]案内軌条式鉄道(新交通システム)
・[事業者]東京都交通局
・[開業年]2008年

■雑感

●この日は、以前知り合いから薦められた「日暮里・舎人ライナー」に乗ることにした。ここから公共交通のデザイン研究がスタートします
●さすが近年開業の路線だけあって、案内板からトイレまで、デザインの統一が図られている。どの駅もトイレはこんな感じ

日暮里駅のトイレ
見沼代親水公園駅のトイレ

逆に考えれば、その駅の個性はあまり出ていないことにもなるんだけれど、その点は、駅ごとに固有の色を持っている点で画一化の弊害を克服しようとしている。
今度書くであろう「みなとみらい線」に関しては「それぞれの駅が個性を持っている」というコンセプトを基に、それぞれの駅の持つ個別のテーマで駅を作り上げている。それは駅空間(ベンチまでも!)、駅名の字体等で表現されている

●ちょうど撮影をした2009年5月3日の時期は開業1周年期間だったようで、それを祝う映像が自動改札のディスプレイで流れていた。

(●動画)

●券売機上の「普通乗車券運賃表」。

 路線は途中で分岐しない一本道。従って、路線図もシンプル。

 特徴としては、
 ・駅を示す点の色が駅ごとに違う
 ・駅名は斜めに表示
 ・駅間の料金を併記している
 ・日本語と英語を併記(英字はかなり小さい)
 ・各駅名表記のフォーマットは、「駅を示す"■"(各駅色が違う)」「駅番号」「駅名(日本語)」「駅名(英語)」
 ・現在の駅名は赤字表記
 ・駅名の英語表記については、以下を参照

●駅名の英語表記について

実は、事業者各社によって微妙に違う。(もしかしたら社内でも表記が違う可能性もある)
・例えば、大文字・小文字、どちらを使用するか微妙な場合。
(難しく言えば、接頭辞の後に付く固有名詞の頭文字、もしくは接尾辞の頭文字を大文字にするか否かということになる。例は以下の通り。)

「西新宿」を「Nishi-shinjuku」と表記するか「Nishi-Shinjuku」と表記するかとか、
新御徒町」を「Shin-okachimachi」か「Shin-Okachimachi」、
西新井大師西」を「Nishiaraidaishi-nishi」か「Nishiaraidaishi-Nishi」と書くか(これの場合は接尾辞の頭文字が大文字になることはなさそうだけど)

日暮里・舎人ライナーにおいては前者だったけど、今度書く予定のつくばエクスプレスは後者(微妙に違うところもあるが)だった。
つくばエクスプレスの路線案内

・ハイフン(『-』)を使ったすべての駅名表記(日暮里・舎人ライナー編):
「Nishi-nippori」「Akado-sho(oの上に横棒)gakko(oの上に横棒)mae」「Adachi-odai」「O(Oの上に横棒)gi-o(oの上に横棒)hashi」「Nishiaraidaishi-nishi」「Toneri-ko(oの上に横棒)en」「Minumadai-shinsuiko(oの上に横棒)en」

・固有名詞+一般名詞が組み合わさってできている単語についてはそれぞれをハイフンでつないでいるようだ
・英語表記に従い、単語の頭文字だけしか大文字にしていない
・「オー」など、長母音の表記にはその短母音の上に横棒を表記し、長母音として扱っている
・「Akado-shogakkomae」の場合は「-mae」と接尾辞の表記をしていない。ハイフンは1回までしか利用できないのか、それとも一般名詞と接尾辞の間はハイフンで結ばないのか、それともテキトーに決めた結果なのか、それはよくわからなかった。

●駅構内の案内(日暮里駅その他)

・建物の階と出口に関しての表示は黄色、それに付随する案内は灰色と、色によって役割がよくわかる


(以上3つの写真は@日暮里駅)

(以上2つの写真は@見沼代親水公園前駅)

・線路と出口、現在地がわかりやすい地図

障碍者のための点字と音声による案内、足元には点字ブロックもある。だが、障碍者にとって、この設備がどれだけ使いやすいのかは、実際の声を聞いてみないとわからないだろう。そのあたりはどのようにモニターテストをしているのだろうか

・位置的には、○にiの印の「情報コーナー」に上記のものがある

●ホーム階に上る。頭上の電光案内ボードには、「出発時間」「路線種別」「終点」の表示と、アナログ時計がある。「↑ のりば Tracks」の表示もある

・路線の経路表示だけでなく、後付け(貼り)の時刻表も貼られている

・電車内への二重扉の外側に駅名の表示があるのだけれど、ドアごとに漢字、ひらがなと交互に駅名が表記されている

●乗車。対面席だと、どうしてもこのようにヒザがぶつかってしまう

・すべての駅・線路が高架上にあるので、踏み切りも存在しない。ずっとこのような高い位置からの風景を楽しめる。逆に言うと、街の景観にこのような高架が存在するということになる。それがプラスと見るかマイナスと見るか、それはいまだもって悩ましい

熊野前。駅に着く際に、ホーム端の窓に駅名が漢字とひらがなで表記されている。現在自分がどのあたりにいるのか確認しやすい

他の駅も。
西新井大師西駅
舎人公園駅

・電車内に中吊り広告は無い。車両中ほどに次の駅を示す電光表示が

車内の路線案内

・席に関しては、対面席(2人掛け×2脚の向かい合わせ)、一人用席、車いす用席がある。

車いす用席には軽く腰掛けられるようなクッションが付いていて、普段は一般客が利用できるようになっている

・通常席は青、優先席は赤

●電車を降りる@見沼代親水公園前駅

・それぞれの駅のカラーを使った例:
見沼代親水公園駅は明けやオレンジの暖色系
熊野前駅は青が基調だ

・改札を出てすぐに情報コーナーがある。見つけやすく、これは助かる

・「都営まるごときっぷ 1日乗車券」700円。都営の公共交通(電車・地下鉄・バス)のすべてが乗り放題

・バスへの乗り換えも大変スムーズにできるように開発されている。雨よけの屋根とベンチもついている(@見沼代親水公園駅)
東武バスは、都営バスに比べて、割とバスにも力を入れているように感じる。車両にしろ、案内にしろ

●再び乗車、熊野前駅まで

・「ゆりかもめ」と同じく、運転手がいないため、電車先頭での景色を座って楽しむことができる

・乗り換えのための案内のわかりやすさも重視すべき点だと思う

熊野前駅で都電に乗り換え、三ノ輪橋駅を目指します

■締めの感想

やはり新しいだけはあって、あまりデザイン的には文句の言えない部分が多い。
というのも、この路線は情報を伝える難度が低いというのもあるからなんだけど。
(例えば、分岐が無い一本道の路線。これは非常に情報としてはわかりやすい)

情報のフォーマットをある程度そろえると、見る側もそのフォーマットに慣れてくるため、情報は伝わりやすくなる。それを新規路線でやるだけでなく、既存路線でどこまでやるかが今後の課題になるだろう。

地方都市においては特にそういった情報のフォーマットを統一する価値はあると思う。それは、情報のフォーマットを作るだけでもしんどい事業者があるだろうから、という推測の元なのだが(都バスにも若干そのしんどい傾向が見られる)。


情報以外の建築設計的なデザインに関して言えば、ホームにベンチが無いのはお年寄りには厳しいのではないだろうか。それと、車内のシートの配置が果たしてこれがベストなのだろうか、という疑問も残る。どちらかというと住民の生活に密着したものなのだから、対面型のシートの存在意義もあるのだろうけど、ひざがぶつかってしまうのは気になる。それは私が一般の日本人より大きいというのもある。ただ、こりゃ大柄な外国人は利用しづらいだろうなあ。そういうことは想定していないということなんだろうか。効率を求めるには仕方ないのか。